- １．硝酸塩・亜硝酸塩を添加しなければ安全か？
- ２．本記事の情報ソース
- ３．硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムとはなにか？
- ４．硝酸塩・亜硝酸塩に関するその他の基本情報
- ５．硝酸塩・亜硝酸塩はFDA認可されているが、加工肉への添加量には上限が設けられている
- ６．硝酸塩・亜硝酸塩なしの加工肉にはセロリパウダーが添加されている
- ７．まとめ
１．硝酸塩・亜硝酸塩を添加しなければ安全か？
今まで、アメリカのスーパーでサンドイッチ用のハムを買うとき、「no nitrates or nitrites added」と書いてある商品を選ぶようにしていました。
硝酸ナトリウム（sodium nitrate）や亜硝酸ナトリウム（sodium nitrite）（以下、合わせて「硝酸塩・亜硝酸塩」）が体によくない、とよく聞くからです。
しかし、硝酸塩・亜硝酸塩（nitrates and nitrites）が入っていなければ、安全といえるのでしょうか？
今回は、この点について、調べてみました。
２．本記事の情報ソース
今回の記事を書くにあたり、いろいろオンラインサーチしてみた中で、比較的有用と思われた以下の情報を参考にしました。
FDA 規則 21 CFR 172.170 と 21 CFR 172.175
US Electronic Code of Federal Regulations Reading Aid ウェブサイト｜Title 21 – Food and Drugs–Volume 3
“Is Sodium Nitrate Safe?”
Nourish by WebMD ウェブサイト｜Is Sodium Nitrate Safe? Reviewed by Dan Brennan, MD on October 25, 2021
“Is Eating Deli Meats Really That Bad For You?”
The New York Times ウェブサイト｜Is Eating Deli Meat Really That Bad for You? By Roni Caryn Rabin on December 14, 2018
３．硝酸ナトリウム、亜硝酸ナトリウムとはなにか？
ベーコン、ハム、ソーセージといった加工肉製品に含まれる硝酸塩・亜硝酸塩（nitrates and nitrites）としては、以下の 2つが主流です。
硝酸塩・亜硝酸塩は体内で一酸化窒素（nitric oxide, NO）とニトロソアミン（nitrosamines, NR2-N=O）になります。
ニトロソアミンについては、発がん性をもたらす可能性が報告されています。
４．硝酸塩・亜硝酸塩に関するその他の基本情報
硝酸塩・亜硝酸塩に関するその他の基本情報としては、以下があります。
５．硝酸塩・亜硝酸塩はFDA認可されているが、加工肉への添加量には上限が設けられている
硝酸塩・亜硝酸塩を含む加工肉がアメリカで広く売られていることからも明らかなように、硝酸塩・亜硝酸塩を加工肉に添加することはFDAにより認められています。
ただし、硝酸塩・亜硝酸塩の添加量については、一定の上限が設けられています。
21 CFR 172.170 Sodium nitrate.
The food additive sodium nitrate may be safely used in or on specified foods in accordance with the following prescribed conditions:
(a) It is used or intended for use as follows:
…
(2) As a preservative and color fixative, with or without sodium nitrite, in meat-curing preparations for the home curing of meat and meat products (including poultry and wild game), with directions for use which limit the amount of sodium nitrate to not more than 500 parts per million in the finished meat product and the amount of sodium nitrite to not more than 200 parts per million in the finished meat product.
21 CFR 172.175 Sodium nitrite.
The food additive sodium nitrite may be safely used in or on specified foods in accordance with the following prescribed conditions:
(a) It is used or intended for use as follows:
…
(3) As a preservative and color fixative, with sodium nitrate, in meat-curing preparations for the home curing of meat and meat products (including poultry and wild game), with directions for use which limit the amount of sodium nitrite to not more than 200 parts per million in the finished meat product, and the amount of sodium nitrate to not more than 500 parts per million in the finished meat product.
（筆者注：21 CFR 172.170と21 CFR 172.175を併せて読むと、sodium nitrateは加工肉中 500 ppm まで、sodium nitriteは加工肉中 200 ppm まで、と規定されています。）
出典： https://ecfr.report/t/title-21-food-and-drugs-volume-3/#172170_Sodium_nitrate
６．硝酸塩・亜硝酸塩なしの加工肉にはセロリパウダーが添加されている
それでは、「硝酸塩・亜硝酸塩の添加なし」（no nitrates or nitrites added）と書いてある商品なら、安心なのでしょうか？
ちょうど手元にあったアマゾンフレッシュで買ったハムを見てみました。パッケージには「NO NITRATES OR NITRITES ADDED」（硝酸塩・亜硝酸塩の添加なし）と書かれていますが、そこには注釈「Except those naturally occurring in cultured celery powder」（ただし、セロリパウダーが添加されている）がついています。
つまり、硝酸塩・亜硝酸塩は添加されていないけど、その代わりに、セロリパウダー（celery powder）が添加されています。
そして、上記参考文献によれば、「セロリパウダー」自体が、硝酸塩・亜硝酸塩を含んでいます。この点は見逃せません。
すなわち、「硝酸塩・亜硝酸塩」の代わりに「セロリパウダー」を添加すれば、「硝酸塩・亜硝酸塩の添加なし」と商品表示できることになっているところ、「セロリパウダーの中に硝酸塩・亜硝酸塩が含まれている」というわけです。
そして、上記参考文献によれば、「セロリパウダーを使えば、硝酸塩・亜硝酸塩の添加量が少なくてすむ」というわけではないようです。
むしろ、セロリパウダーを使う場合は、FDAによる添加量の規制がないので、通常の加工肉よりも多くの量の硝酸塩・亜硝酸塩を摂取することになる場合が多いそうです。これは覚えておきたいポイントです。
７．まとめ
「ある程度の量までの摂取量であれば、人体に害はない」ということで硝酸塩・亜硝酸塩はFDA認可されているわけですが、「硝酸塩・亜硝酸塩が体に良くない（特に、硝酸塩・亜硝酸塩を摂取後に体内で生成するニトロソアミンが発がん性をもたらす可能性は否定できない）」ことも事実です。
今回、「硝酸塩・亜硝酸塩の入っていないハムなら安全」とは言い切れないことが分かりました。
一方で、硝酸塩・亜硝酸塩は摂りすぎなければ、必要以上に恐れることもなさそうです。
以上のことから、結局は、加工肉は食べすぎないようにして、ときどき、おいしく食べるようにするのがよさそうです。
追記：Weee!で買った黒豚あらびきソーセージの成分表示をよくよく見てみたら、「cooked bacon (cured with water, salt, sodium erythorbate, sodium nitrite)」と「sodium nitrite」が入っていました。sodium nitrite（亜硝酸ナトリウム）が入っているけれど、おいしいし、ときどき少量食べるだけなので、今後も本製品を買う予定です。
